冷たい心

 私の行く先に、何が待っているのかと。ただ、思いなやんでいた。
 空が青く、また海の青いのが遥かに心地よく、唯、何時間でも眺めていた。
 その頃の私は、全く酒に溺れて一瓶ウイスキーを飲み干すか、西成まで出かけ、売人から買った、スピードやら、マリージェーン(マリファナ)を極めるまでは、軍隊の進軍よろしく只唯、道なき道。壊れかけの危うい橋を文字どおり猛スピードで走っているだけであった。
 私が住んでいたのは、或一軒家で。私が、5才の時に死んだ父が残してくれた、僅かなスペースであった。しかし一軒家といってもそれは正確には倉庫と言うべきものであった。  
 冬は寒く夏であっても風が吹きすさび夜は寒く、全く香港に売られた奴隷より、いやインドの最下層の人間より厳しい生活を余儀無く強いられていたと確信する。しかし国の行政を恨むでもなく、(いや多少は険悪な心持ちでいたかもしれぬ。)日々を幽かに過ごしていた。
 春夏秋冬、過ぎ行く日々は明日への未来へ。アスタマニャーナ。きょうは明日明日はまた今日である。
 そんな時私の家のシャッターを叩くケタタマシイ音が眠ってい
る私の身体に響いた。