薬の窓

誰の名を呼んでいたのかは、忘れたが・・・人の名を呼んでいたようであった。
 「昨日、何の夢を見ていたの?」
 「知らないよ。」
 夜みた夢を人はどこまで憶えているのであろうか?
 なら白昼夢ならばいったいどこまで覚えれるのか?
俺が昨日みた夢で思い出せるのは、再開発が進む荒野と山。
その土地にてキスを求める女。その女の求めるままにキスを続ける俺。
 或、一室で。
 笑えよ、夢なんてそんなもんさ。いったん、言葉にしてしまえば俺が見た夢のリアルさも、情景も完全には他人には伝わる事は困難である。
 ここで、今この場所で、今ここで俺は夢を見ているとしたら、どうだろう。終わらない夢か・・・。カウボーイビバップじゃあるまいし、あらゆる夢の、全ては続きなのか?
 或、寓話で、夢だけで生きたいと願った男は発狂した。
そして、その男は発狂の後、世間からは発狂したと思われ、自分自身は夢の中で生き続けた。
 めでたし、めでたし・・・。ニーチェもあるいはそんなところであったのかも知れぬ。