泥棒宿

 朝起きて何の変化も無いことにほっとした。完全防御体制だった。
コンコンとドアにノックの音。
おなかがすいただろう?と朝食を男が運んできてくれた。だが睡眠薬強盗を警戒しておなかが今は一杯ですありがとうと断った。こちらの疑心を思ってかほら私も食べるからと運ばれたパンを食べたが尚も私は警戒していた。

 これからの長旅にオイルマッサージはどうか?とこれも断ったが男はしつこかった。そうパキスタンはイスラム教なのでホモが多いとの噂もかねがね聞いていたから。しかし好意なら悪いなと思いマッサージは受けることにした上着を脱いでマッサージを受けていたが下のズボンも脱げとしつこい。それも丁重に断ったのだが
…お前は男だろ何を恥ずかしがってるのか?と挑発してきた。いや男だから躊躇してるんですがと思ったが。そこまで言われて断るのもしゃくに障る。腰に巻いていたマネーベルトをベッドに置きパンツ一丁でドアを警戒しながらマッサージを受けた。ふとしたすきにベッドのマネーベルトは大丈夫か気になって見るとなんと二階の窓から宿の主人がこそっと私のパスポートやらが入ったベルトを盗もうとしていた。これにはさすがの私も切れた。
「なにさらしとんじゃ〜こら〜!!!」と叫ぶと宿の主人は
「ノー、スネーク、スネーク」と。そうか蛇が出たから私を助けようとして…って嘘つくな!とマッサージの男共々部屋から追い出した。
 完全に篭城する私に宿の主人は悪かったと繰り返す。ま、インドに比べればかわいいものかとは思ったが。
しかしこのまま素直に部屋を出るのもしゃくに障るので荷物を窓から放り投げ、雨樋を伝って下に下りて逃げた。そのまま若者割引の申請の為役所に行き無事に電車の割引証を発行してもらいそうそうにラホールを出た。
ラホール発11時であった。