新命

 新しい命が産まれる。
 昼に細君から連絡があり、印鑑証明を取ってきてくれると
 その後、19時頃から散歩をして途中に破水したと
 どうりで携帯に電話しても圏外かとまさかの状況
 細君の母から21時頃に入院の知らせを
 24時間以内には産まれると…

 ま、明日の夜だと思っていたら携帯に病院から着信が。
 細君からだ「もうダメ早く来て」と
 話もせずにすぐ切れる。たらこスパゲティを食べ終えた矢先だ、ビールを缶一本だけだったので、ま飲酒は大丈夫だろうと車で病院へと向かう。
 病院へ着いて路駐して、足早に近くの適当な階段を登り分娩室へと向かう。着くと分娩台の上で彼女は必死の様相だ。
 立会いますか?と看護婦さんに言われたがこれは思い切りよく止めにした。が、細君の苦しみが断続的に続き、もう出産の準備をしますと。お父さんはこちらへ来てくださいと言うがままに従う。
 細君の手を握りながら…赤ん坊の心音を聞きながら祈るだけ…しか出来ない自分。
 「頭が見えましたよー」と叫ぶ看護婦さんの声が聞こえたが、彼女の出血の大量さに私が倒れるのが先かと思った。
 朦朧とした私の頭に何かの呪文が繰り返し流れていた。それがどの祈りかは不明であった。
 都合3時間ほどで赤ん坊が生まれたが。不思議な気がしてしかたがなかった。