捨てられソウスケ

 雨が降っていた。
 彼女に捨てられた実感を梅雨の空を眺めながら立ち尽くしていた…。
 あても無く歩く道すがら、猫の声が聞こえた。
 またしても、捨て猫がいた。ダンボールの中に。
 私は仔猫に言った。
 「拾ってやるけど、俺に頼るなよ。俺だっていつ野垂れ死ぬか未来はわからないぜ。お前がこの世界で立ち回れるまではなんとか頑張るがな、共倒れはごめんだ。俺が行き倒れたってお前はこの狡猾な世界で生きていく術を身に着けるんだぜ!」
 抱えてやった仔猫は命の静けさと温かさをもっていた、そして静かに私の胸元でニャーとかすれた声で鳴いた。
 捨てられた俺と拾われた猫の対比が今日の日を照らさずにいる太陽の光を思って不思議に笑いがこみ上げてきた。