上海駅

 朝近くの銀行で両替をして高級ホテルをチェックアウト。こんな旅だと先がおもいやられるなと。上海はもういいやと、とにかく内陸へと敦煌迄行こうかと思案していたが…。
 とにかく上海の駅へと向かった。時間はある為、ホテルから歩いたが…その道のりは長いことこの上なかった。バイタクにも乗らないかと言われるが節約となによりボッタクリを敬遠して結局2時間程は歩いたか。しかしそこから駅に着くとこれが噂のとばかりにキップ売り場は長蛇の列。どうしようか考えていると、私と同じような世代の男が一人話しかけてきた。

 どこまで行くのかとその男は聞いてきたが私はどことも考えていなかったが怪しいやつと思いながらもとっさに上海から近くの無錫だと答えた。そうかと男は頷くと、こっちだと手招きをして外国人専用のチケット売り場へと誘ってくれた。男の言うがままにチケット売り場に並び無錫迄のキップを買い改札へと男と入った。この男の親切に日本円の小銭をあげた。電車が発車する間際に乞食の子供が私の膝元に寄ってきて歌を歌いながら金を要求し始めた。私は無視していたが、男は幾ばくかの小銭を渡すと子供は去っていった。
 電車の時刻になり男に礼を言うとアドレスを言うので手紙を送ってくれと男は言ったが結局旅が終わった後も書かずじまいであった。
 電車は指定席で金持ちばかりが乗る車両の様子で私はまるでまいごの子猫のように静かにしていた。まわりを楽しむ事はできなかった。
 駅には15:48に着いたが全く何も無い。駅の客引きに連れられるままに小型の車に乗りホテルへと向かった。
 夕食はホテルの近くの定食屋で食べたが何人もの若い男と女が娯楽も無い土地でかわいいナンパの夜を楽しんでいる風に思えた。
 風が吹きすさぶ街で近くの雑貨屋へと向かい夜のつまみにポテトと煙草を買った。
ホテルへと戻る道すがら、バイクの群れが轟々と大通りを過ぎ去っていくのを見た。
 バイクを夜に乗り回す事がここでの娯楽の一つなのだなと今さらながら日本の数々の多すぎる選択肢では誰もが選ぶ事に迷っている。今日の私が迷子の子猫なら私が脱出してきた日本の人々は迷える小羊ではないかという思いが。睡眠へと誘われる私の脳裏に鮮やかな子猫と小羊のワルツとして浮かび上がった。