らもが残した微笑

 彼については書かないでおこうと決めていたが、時間がたちいざ生きる者の側に立ち少しの感慨がある事は確かだ。らもの精神と共に私の青春が歩んだと言っても過言ではないと思っている。らもが眺める世界を身にしみてただうなずいていた。
 数々の死線を乗り越えてきたらもが呆気無く死んだという事は、あまりにも当たり前で、かつそれはやがて私にもふりかかる必然と偶然の産物であるように思われる。私的な妄想で申し訳ないが、彼に関してはまだ残すべきものがあったはずだ。しかしながら、晩年の彼をみているとその残すべきものを生み出す力もあったにもかかわらずできなかったのではないか。