街灯の灯よ!永遠の業よ!

 忘年会。今では支店の先輩は新潟のNoや九州はKrへと行っている。
 久し振りにみんな戻ってきた。そして年最後の忘年会を。焼き鳥屋で飲み、クラブで酒をしこたまかっくらった。後輩が飲み過ぎたので仕方なくまだましな私が運転する事に…。そして最後は女の元へと急いだが今日は終了であった。しかたなくラーメンでも食って帰ろうと話して向かっていた矢先パトカーが後ろから。

 そこの車止まりなさいと。止められた「やばい終わったな」と独りつぶやいた。
罰金20万にしろ、免許停止にしろかくごした。
 すぐに免許証の確認後「こんだけスモーク張っていたらなにか怪しいものを車に積んでいると思うよ」とメガネの警官が言ってきた。「ちょっとお酒飲んでるね?息を私の顔にはーと吹いてみて」と言われるまま吹いた。「やはり酒の臭いがするので検査してもよいか?」と警官。ここで抵抗しても無駄だと思い素直に車を降りた。「トランクも確認するから開けてもいいか?」と警官のなすがまま。その間に車に戻り最後の抵抗でペットボトルのお茶を一息で飲んだ。
 パトカーの車内ではまるで罪人のごとく、いや飲酒と車という凶器を扱っていたので全く罪人と言われても仕方はないのだが…。恐る恐る吹く飲酒の検査のビニール袋は透明でここへ吹く私の息は自分自身の悪の業を吹き入れているかのような錯覚に陥った。
 何分か沈黙の後、体温計に似た飲酒を測るガラスの道具を見つめながら。警官はにやっと笑みを浮かべた。その瞬間、刑罰を覚悟した。唐突に「よかったな」と晴れやかな警官の笑みがこぼれた「後3目盛り過ぎていたら飲酒だぞ。これだけの差で自分の人生を棒にふるなんてどうかしてるぜ!例え相当な量を飲んでいても、また少量でも我々はこの機器を頼りに判断するしかないからな」と言い「ま、でも多少なりとも飲んでいた事は事実だから」と今後飲酒にて運転はしませんという誓約書を書かされた。ほっとした、車に戻ると隣に乗っていた先輩も助かったと息を吐いた。警察の神がいるなら感謝しただろう。
 今回もう終わりだと確信の背後に今回も大丈夫だという逆転の考えも脳裏をよぎったのも確かだった。
 代行を呼び後輩を乗せ、タクシーで帰る道すがらこれで私は何度警察に助けられたろうと数えた。
 巨大なミッ○−マウスを見た時も、インドで悪徳旅行業者に連れていかれた時も、トルコで両替えの際に
騙されかけた時も…。
 私は数限り無い悪行を繰り返し、いやその全てが悪行では無いにしろ神でさえも私を助けるとは思えない数々の悪の限りの先に…。ここにおいてもなお激鉄をくらわそうとしなかった運命とはなんであろうか?
 街灯の灯がおもむろに私の上でちかちかと瞬いていた。その街灯の明滅する先の終わる街灯の命を思った。そして…何度もこりない自分の愚かな業に…悪態をついた。
 時には自分の愚につきたい時もある?有り過ぎだ。因果応報、いや因果横暴だこれじゃと独りごちたが、それを笑う事は今夜は出来なかった。