熱を帯びる女

 路線ごとに乗る人種が違うと感じるのはなにもパリの地下鉄だけではあるまい。
パリでは地下鉄の路線の駅によってアラブ人の多い地区の駅や中国人街の駅、ユダヤ地区、ギリシャ、アフリカまたは日本人街と様々であった。
 その感覚が身についているのではと思うのは日本でもJRや南海、阪神、阪急とそれぞれ同じ日本人であっても何かしら違うような感覚がする。
 頻繁に利用する路線によっても違うがいつも同じ路線を使っていて、たまに違う路線に乗ると或種の違和感が襲う。

 そう今日は違う路線で帰る電車内で
 向かい合せになった女性が苦しそうに「あの、頭痛薬。お持ちじゃないですか?」と聞いてきた。
不思議な風貌の年は20才くらいの女性であった。
「いや、持って無いな。」と言うと「そうですか、すみません。 今日は持ってくるの忘れちゃったみたいで…。」と答えた。
 そして「熱ありますかね?喉の辺りを触ってくれませんか」と聞いてきた。
私は躊躇しながらも、言われたので恐る恐る触ると確かに熱を帯びていた。