呪われし、かぐや姫

 大学病院の庭に可憐なコスモスが風に揺られていた。その小さい蕾みや花弁の白が太陽の光りに反射され燦然と私の目に眩く映った。照る陽の庭…。
 花壇の脇で強風に靡く木々の葉は呼吸をしているかのようにさわさわと波打っていた。
 私が彼女に会うのは実に4年ぶりだ…。
 そうちょうど一年前だった、私の携帯に見なれぬ番号で着信が入ったのは…。 「はい」と不審に思いながらも出ると「どうも、岸神さん?ですか?」と図太い男性の声がした。「どちらさん?」と聞くも「岸神さんですか?」と尚も強い口調で問いつめるかのような口ぶりで聞いてきた。「あのね、どちらさんですか?まず自分の名前を名乗るのが当然じゃないですか?」と私も強く答えると「えっ、あ、すみません。岸神さんの携帯とうかがったものですから…。」「だとしたらどうなのですか?」「申し後れました西警察の巡査部長の甲羅といいますが…。」えっ!と思った。まさか家の裏庭で栽培している芥子の事か、それとも財布の中のシャブ?いや捕まった時はこれはスピードですと言おうか。まさか、倉庫の一番奥のとっておきのLSDの事か?と冷や汗が背中を伝っていった。
 「じつは…」と警官が言った所で私は薬関係では無いなと確信した。彼の口調がさっきとは変わっていくぶん優しくなっていた。
 では何だろう思い当たる事は星の数ほどある、今の口調では多分車の違反関係か…と思いを巡らしていると
 「なぎささんって御存じかと思いまして…」と言った。
 続く…。