詩人の碧

 空から降る兵士 湖の底の都市 思考とデジャヴュと永劫回帰


 久し振りに暖かな凱風が南から吹き渡っていた。静かに澄んだ透明な湖には白鳥や鵞鳥が飛び立った後の静けさに湖面が鏡のように空の蒼さを映していた。
 暖かい風が吹き出し季節が変わろうとする時でもその湖の水は冷たかった。
 ナーリャは木々の間を楽しげに何年かぶりの芽吹きの大事さを感じていた。
若草が生茂る湖の畔に寝転がり空の蒼さにナーリャは吸い込まれるのではないかと思った。
 そうして、うとうとと睡魔が少しずつ襲って来ていた午後の斜光を遮るように一瞬曇った。ナーリャはまだ夢の中なのだろうと疑ったが空には一人の兵士が落下傘で落ちて来ていた。兵士はなんとか湖から離れようとしていた。どうにか湖を逃れ着地に成功したかに見えたが兵士は横たわったままだった。パラシュートはやがて兵士を完全に覆いかぶせた。