歴史のいわば独立と言うのは、或意味廃虚に過ぎない。デカダンスに対する虚無が闊歩しているのが現実だ。いいかえれば、新しい生き方。不滅な批評家。無感動。禁止事項。肯定的=否定的両面が主観性を思想のもっとも重要な部分へと投げ出すのだ。真実と世間。特殊な成熟。苦悩の情熱。明晰な異端。占有された土地。相対的な古典主義。
 これらのもっとも重要な面はやがて滅びへと至ると言うその一点にかかっているのだ。
引用はしない。自己の欺瞞をさらけだすのが主題だ。ロマンをイメージしてくれ、そこには様々な投影がなされるべき…。ペテン師に似た…。その思想に従属する奴隷との関係。そう、或一点へと到達するのが最重要課題だ…。
 

柄谷行人初期論文集

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